2015年02月09日

超特急燕号誘拐事件

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   ★超特急燕号誘拐事件


昭和10年、超特急燕号。トンネルの中で何が起こったか。
ノスタルジック・ミステリー(新聞新刊広告より)

 
 あらすじや周辺知識は以下のブログに記しました。

 
SF KidなWeblog
 超特急燕号誘拐事件
  http://sfkid.seesaa.net/article/413784201.html

 
 当ブログでは、ネタバレ全開で感想・検討などを書いていきます。
 さて、私としましては、ユーカリおばさんシリーズを読むのは本作が最初となりました。
 ユーカリおばさんが亡くなった後、訪ねて来た老夫婦が語る知られざる事件。
 この事件でのユーカリさんは、結城龍巳の自殺から3年後。見合いをした、ということだから、まだ結婚前でしょうか。それで「亀谷ユーカリ」と名乗っているのだから、「亀谷」は旧姓?
 ユーカリさんの娘(くるみの母親)は綾川さおりという名で記されているから、ユーカリおばさんの本名は綾川ユーカリで、通称は旧姓を使っていた、ということなのでしょうか。

 
(以下、ネタバレ検討会)
 以下、ネタバレで内容について検討していきたいと思います。
 決して、尊敬する辻真先先生の作品にケチをつけようという意図ではありません。
 ミステリーマニアの悲しき習性とでも言いましょうか。
 尊敬するからこそ読む機会も多くなり、必然的に検討対象になることも多くなるということをお許し下さい。
 本当はリアルな現実世界で同好の士とこのようなことを語り合いたいのですが、残念ながら一人ぼっちなので、ネット上にこのような駄文を発表して憂さ晴らしをしているのであります。

   
 さて、一番疑問に思うのは、ウィナー父娘は何で超特急燕号に乗り合わせていたのか、という点。
 本事件は紗陽宮行武殿下が計画的に仕組んだ事件であるからして、当然、フランツ・ウィナー博士が確実に乗車しなければなりません。
 他の乗客のように、偶然乗り合わせたというのではなく、必然的に存在する理由があるべきなのですが、どうなんでしょうか。

   
 第二に、紗陽宮行武殿下がフランツ・ウィナー博士と刺し違える理由はいいとして、その後、紗陽宮行武殿下が意図したように確実に鉄道電化が阻止できるのかどうか。
 アメリカが日本の鉄道電化を意図しているのなら、またすぐに公認のお雇い外国人を送り込むでしょう。そうすれば、確固とした非電化の論客である紗陽宮行武殿下がいない状況では、電化が遂行されるのではないでしょうか。
 私は、紗陽宮行武殿下の行為が、労多くして益なしの自殺行為ではないかと思うのです。
 もっとも、戦争に向かう心理自体が異常な心理なのですが。

   
 第三の疑問点。
 若き亀谷ユーカリ嬢が若き日の四条杉彦に事件の真相の推理を話します。
 それを聞いた杉彦・大隅憲兵大尉・横川警部が消失した燕号一等車の隠れ場所に向かうシーンです。

 
「心配はいらないわ」
「実際はそんな大事にならないと思うわ……ふふ」

とユーカリ嬢は若き小百合に話します。
 しかし、お国が戦争に勝つために必要だと信じる自分の意見を通すために他人を計画的に暗殺しようとする人物が相手です。
 いわば、国家的機密なのです。
 口封じのために目撃者を殺害することは十分あり得ます。
 この場合、大隅憲兵大尉も横川警部も国家としては身内の立ち場でありますが、四条杉彦は臣籍降下の憂き目に合った不逞皇族。一番口封じの対象になりやすい危険な立場ではないでしょうか。

 
 第四の疑問点。
 事件は、悪天候でノロノロ運転中の超特急燕号で発生します。

 
「嵐が接近するというのに、殿下はどうしても西下の必要があると強弁して、燕号を発車させた。……実は嵐がきたからこそ燕号を動かしたというのが真相だった、と思いますの」
ということですが、私は理解力がないので、なぜ嵐が来ると決行になるのか良く分かりません。
 列車が間引き運転されて線路が使いやすいことと、人の目が少ないのでトリックが使いやすいから、という理解でいいのでしょうか。

  
 第五の疑問点。
 なぜ、並木老人は口封じされたのでしょうか。
 加藤少佐が鉄道聯隊の使いに通信筒を渡すのを目撃したから、という推理でした。
 しかし、そもそもその通信筒は食堂車で四条杉彦・ユーカリ嬢、横川警部ら乗客の目の前で紗陽宮行武殿下が加藤少佐に渡しています。
 並木老人が殺されたのなら、食堂車の乗客全員も殺されなければならないはずです。

 
 大きな疑問点は以上です。
 あと、食堂車に紗陽宮行武殿下が入って来た時、四条杉彦に
「どこかで見かけたことがあるな、あなたの顔を」
と言います。
 それを聞いた横川警部が
「私もです、この青年に見覚えがある」
「おい、貴様……最近ブタ箱に入っておらんか?」

と騒ぎ立てます。
 しかしこの言動、紗陽宮行武殿下の知り合いを犯罪者扱いするものではありませんか?
「貴様、私の知り合いを犯罪者扱いするのか」
と紗陽宮行武殿下が怒り出してもおかしくない言動ですが、なぜかスルーされています。

    
 また、平成13年、百合子さんはユーカリおばさんの遺影に向かって
「ユカちゃん」
と語りかけています。
 しかし、事件の最中にこう呼びかけた例はなく、昭和10年の事件後すぐに四条夫妻が日本を離れてそれ以来会っていないならば、愛称で呼びかけるのはおかしいかと思うのですが。

   
 また、超特急燕号の乗員内での協力者・高垣車掌が燕号消失計画遂行のため、目撃者(並木老人)を口封じしてしまいますが、その件については罪を追及されたようです。
 首謀者の紗陽宮行武殿下やその側近の侍従武官・加藤少佐のことは軍事機密扱いとなって表に出て来ないのに、下っ端で協力した高垣車掌だけが罪に問われる。
『オリエント急行殺人事件』では全員見過ごされたのに、本作品では下っ端だけが罪を問われました。
 高垣少佐が
「今度生まれ変わるなら、私は貝になりたい」
と思ったかどうか。
 まあこの件も戦争の不条理を表していますね。
 もし亀谷ユーカリおばさんがオリエント急行殺人事件の真相を推理したなら、どう決着をつけたでしょうかね。

 
  [wikipedia:辻真先]

 
辻真先ミステリワールド総合案内所(建設中)
 超特急燕号誘拐事件
  http://www31.atwiki.jp/h-yamato3/pages/58.html
 亀谷ユーカリ
  http://www31.atwiki.jp/h-yamato3/pages/39.html

 
ミステリの祭典 超特急燕号誘拐事件
  http://saiten.dip.jp/mystery/main/list_review/7252
雑読雑感 本の感想 1361 『超特急燕号誘拐事件』辻真先
  http://www.cwk.zaq.ne.jp/fkdrn906/reguls/book/b_1361.html

 
(※ユーカリおばさんが「特急『燕』驀進す」で牧薩次&可能キリコと共演!?)
鴨がネギしょってやってきた 辻真先 死ぬほど愛した…
  http://blog.livedoor.jp/negisikamo/archives/54607408.html
ミステリータウン 死ぬほど愛した…
  http://www.f-store.net/mystery/town-search.asp?action=%8F%91%96%BC&string=%8E%80%82%CA%82%D9%82%C7%88%A4%82%B5%82%BD%81c&key=9140

 
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タグ:辻真先
posted by SF Kid at 20:53| Comment(0) | TrackBack(1) | 探偵小説
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