2017年01月03日

『模倣の殺意』中町信 ネタバレ検討会

4488449018模倣の殺意 (創元推理文庫)
中町 信
東京創元社 2004-08-13

by G-Tools


 
(以下、完全にネタバレです。注意!!)

 
   
 Febeのオーディオブックで失効するポイントがあったので購入しました。

 
  耳で読む本、オーディオブック 「模倣の殺意」― 中町 信 配信中!

   
 しかしミステリーは耳だけだとよく分からないので、本も購入。
 オーディオブックを聞き終わってから紙の本版を1時間近くあちこちを参照して考え込みました。

   
 検索すると、本書で使われている叙述のトリックは、最近の日本ミステリで多く使われていて、むしろ主流になっていると書いている方もおられました。
 ミステリに疎い私は、そんなこと知らないので、普通に驚きました。
 同時進行で二人を別々に描いているのかと思ったら、実は1年前と現在を交互に描いていたのだった。
 しかし、物語は普通、時系列に沿って描かれるものです。
 それをあえて時系列を分割して交互に配置するとは、少々反則気味では?
 これを時系列に沿って、中田秋子パートを第二部、津久見伸介パートが第三部という構成だったら、どんな感じになっただろうか。

   
 そういえば、1年後の事件を描いていると思ったら、実は同時進行していた!というミステリーを読んだことあった。
 最後の1文で驚く!と話題になったあの作品です。
 あの作品の逆バージョンということか。
 なお、あの作品の発行は2004年、映画化は2015年です。
(この作品については、
  http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20140224/p1
で書きました。ネタバレ注意!!)

   
『模倣の殺意』では、素人の探偵役が恋人や知人の死について調査します。
 素人ながらよく調査し、真相に近付いていくのが見事。
 普通ならここまで執念深く追えませんで。
 時刻表トリックや写真トリックを見破る推理力もすごい。

   
 しかし、同姓同名しかもどちらもミステリ小説を描いている人物を出してくるというのも、反則すれすれ。
 ミステリにおいて双子を出すのは反則だというルールがあるようですが、同姓同名はどうなんでしょうか。
(しかし、姓名判断の理論に従えば同姓同名の人が似たような性格・職業・運命というのも在り得るかもしれない。実は私にも同姓同名の著者がいて、敗北感に打ちのめされている。)

   
 現実世界において同姓同名の存在は面白いものですが、この作品中ではどうだったのでしょうか。
 1年前に自殺した坂井正夫Aさん
 1年後に殺害された坂井正夫Bさん
この二人は、お互いをどう思っていたのでしょうか。

  
 坂井正夫BさんはAさんのノートを誤配されて初めて気付きました。
 坂井正夫AさんはBさんについてどう思っていたのか、気になります。

  
 Bさんの作品が新人賞を受賞したのは1年前の6月。雑誌の8月号に掲載されたというのだから、Aさんが自殺する7月7日ギリギリです。
 6月の受賞時に知ることができたかどうかが問題です。
 もし自分と同姓同名の人物が新人賞を受賞した、と知ったら、自殺の動機が増える一大事ではないでしょうか。
 また、付き合っていた中田秋子との話のタネにしてもおかしくありませんが、中田さんは坂井正夫同姓同名がいたことはくるな旅館の調査時に初めて気付いたことになっています。

  
 少々疑問なのは、坂井正夫Bさんは中田秋子さんをどうやって知って連絡してきたのでしょうか。
 Aさんの草稿ノートに中田さんについて書いてあったとか管理人に聞いたとか説明されていますが、力技でごまかしているような気がします。
 草稿ノートに恋人の名前を書くとか、管理人が恋人の個人情報を知っていたとか、常識的にあり得ないと思うのですが。
 ここは中田秋子からBさんにアプローチした、とする方がスッキリすると思うのですが。

  
 さらに言えば、普通の人間なら、
「私の死んだ恋人のノートが同姓同名のあなたの所に誤配されていませんか」
と問い合わせるのが自然な成り行きだと思うのですが。
 私ならそうします。
 そうやって問題のノートを早々に取り戻しておけば、Bさんも殺害されることなかったし、中田秋子も殺人に手を染めることなかったのではないでしょうか。
(しかし、いずれBが瀬川恒太郎の盗作に気付いて恐喝されると困る)

   
 295ページで、中田秋子が問題のノートを発見して中を見るシーンがあります。
 筆跡は明らかにAのもので、恋人だった秋子さんがそれに気づかないわけがない。
 ここ、重要シーンです。
 気付かないふりをしている中田秋子には何らかの意図がある!
 そのことに気付かないBはやはり、ミステリー作家としては適性がなかったのでしょう。

   
 さて、坂井正夫Aさんは、『七月七日午後七時の死』を清書して、中田秋子に送りました。
 中田秋子の父親が改作して発表したいわく付きの作品です。一体どんなつもりだったのでしょうか。
「あなたのお父上が盗作した。ひどいことだ」
でしょうか。
「あなたのお父上に認められた作品、私の最高傑作で誇らしい作品です」
でしょうか。
「私のお父様の最後の作品の改作じゃないの」
と誤解される可能性について考えなかったのでしょうか。

  
 思いつくままつらつらと書いてきました。
 まだあるかもしれませんが、今回のところはこの辺で。

  
 創元推理文庫版には、濱中利信という方の解説があります。
 簡にして要を得た的確な解説だと思います。
 世の文庫本には的を得ていない解説が多くて辟易するのですが、こういう解説が標準となってほしいものです。
 Febeのオーディオブックにはこの解説は入っていなかったので、文庫本版を購入した意義があったものです。


  濱中利信さんのHP http://www.ne.jp/asahi/wweg/gorey/


模倣の殺意 (創元推理文庫)模倣の殺意 (創元推理文庫)
中町 信

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  [wikipedia:中町信]


Frederica Choborine の音楽帳 楽譜と書評ブログ
 話題の模倣の殺意を読んで ※ネタばれ&作品検証は記事下のみ
  http://fredericachoborine.blog.fc2.com/blog-entry-179.html
平成の書見台<Takao Kurataの読書日記>
 叙述ミステリを読む−「模倣の殺意」「殺戮にいたる病」「ロートレック荘」
  http://d.hatena.ne.jp/inochinooto+alsosprach/20130426/1366984845
(元)ミステリー作家T・A  あさっての日記
 中町信さんの『模倣の殺意』について
  http://89865721.at.webry.info/201305/article_2.html


カフェの森 模倣の殺意
  http://ameblo.jp/ppetit/entry-11517523547.html
5月の葉っぱ 本の感想 ◆模倣の殺意 中町信
  http://www5b.biglobe.ne.jp/~happa/i/b_nakamati01.html
World of delight 模倣の殺意/中町信
  http://blog.goo.ne.jp/tear_rain_candy/e/b6be358a7c34b4b77026f82fb7df7ff1
えみみん 「模倣の殺意」 中町信
  http://yaplog.jp/umihana/archive/1160
読書感想 「模倣の殺意」  中町信著  創元推理文庫  ★★★☆
  http://chiruru888.web.fc2.com/book/review-book05/nakamachi-shin.html


ミステリの祭典
 模倣の殺意「新人賞殺人事件」改題
  http://saiten.dip.jp/mystery/main/list_review/1029
■著者没後、予言通りの人気
  http://book.asahi.com/reviews/column/2013041700003.html
【なぜ今?】およそ40年前に刊行された小説がいまバカ売れ中のワケ - NAVER まとめ
  https://matome.naver.jp/odai/2136957971585098501


 【初版】新人賞殺人事件(1973年6月 双葉社)
ブクログ http://booklog.jp/item/1/B00R0O68IC  
読書メーター http://bookmeter.com/b/B00R0O68IC 
 【改題】新人文学賞殺人事件(1987年2月 徳間文庫)
ブクログ http://booklog.jp/item/1/4195682266
読書ログ http://www.dokusho-log.com/b/4195682266/ 
読書メーター http://bookmeter.com/b/4195682266
 【改題】模倣の殺意(2004年8月 創元推理文庫)
ブクログ
  http://booklog.jp/item/1/4488449018
  http://booklog.jp/item/1/B00APRTZ0E
読書ログ http://www.dokusho-log.com/b/4488449018/
本が好き! http://www.honzuki.jp/book/15386/review/165609/
読書メーター http://bookmeter.com/b/4488449018
↑徳間文庫版の表紙がレトロ風で良い。鮎川哲也の解説が収録されているようです。
 双葉社版の表紙があまり出てきません。ヤフオクのキャッシュから拝借しました。
   http://f.hatena.ne.jp/nazegaku/20170104071311



  
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posted by SF Kid at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 探偵小説
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