2017年12月29日

『ダビデの星の暗号』井沢元彦 ネタバレ感想




「伊達騒動」の秘密が隠された掛け軸の暗号を調査すると、それが同じ時代に発生した幕府と天皇家の争いの謎につながり、さらに日本ユダヤ同祖論にまで発展していくというスケールの大きなミステリー。
 本作品に登場する暗号は、単純ながらよくできている。若き日の江戸川乱歩が一目で仕組みを解明したという設定もいい。
 ミステリーファンに解かせてみるのも面白そう。
 
 それで、掛け軸の暗号を解読してみると
 
「先帝の御意志は「カコメノとうろう」を探るべし。時節変ることあらばこのこと天下に布れるべし」
  
 つまり、徳川将軍に蟄居させられた上皇の倒幕の密勅が隠されている、ということ。だから山県有朋なども探索に絡んでくる。
 しかし、本作品を読んでいると、籠目の灯篭の中に隠されたものが倒幕の密勅なのか天皇家の系譜を述べた秘本なのかよく分からなくなってきます。
 山県有朋の配下で代々朝廷の史博士を勤めていた小宮清顕はむしろ天皇家の系譜の探索の方が目的のようになっています。
 さらに、掛け軸の暗号を探るもう一つの謎のグループ・ヘキサグラム団の目的は、日ユ同祖論を証明することだった。
 倒幕の密勅なら日ユ同祖論とは関係ないが、天皇家の系譜を述べた秘本なら関係するかも。
 で結局、上皇が倒幕の密勅と一緒に天皇家の系譜を送り、それらが同じ場所で保管されていたということなのだろうか。

 日ユ同祖論は余計だったけど、仙台の伊達騒動が京都の朝廷の後西院帝を巡る騒動と相似形をなして関連しているという設定は面白かった。すごい仮説だ。
 しかし井沢氏のオリジナルの学説ではなく、ウィキペディアを見ると、そういう仮説は以前からあったようです。
 後西天皇の称号についても色々書かれています。本作品を読んでいる間は、何だかすごいスキャンダルが暴露された!と興奮していました。
 後からウィキペディアで調べると、特に事件性はなく当たり前のような記述になっていて、どこまで本当のことなんでしょうか。
 しかしこういった事項をつなげてミステリーに完成させたのだから、これはこれですごい作品です。しかも探偵役が芥川龍之介!
 
 私が本書を購入したきっかけを思い出します。
 本書発行は1985年。島田荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』は1984年。
 新聞の文化面や読書面に「漱石や芥川が探偵役で活躍」といった感じでセットで紹介されていました。
 ついでに森鴎外が探偵役で登場する『伯林―一八八八年』(1967年)も挙げられたりしていました。
 そんな記事を覚えていて、書店で本書を見つけた時、購入したものです。
 例によって
「芥川龍之介の主要作品を読んでから読もう」
と思っているうちにうつ病になってそのまま本も読めない状態になって人生を落伍することになったパターン。
 精神状態がようやく改善してようやく読書の楽しさを味わえることになったことに感謝。
 
 井沢元彦に関しては、その後NHKの歴史番組『歴史発見』のレギュラーコメンテーターになっていました。
 ある時、織田信長だったか足利義満だったか尊氏だったかの回で自説の仮説を発表した回を見たことあります。
 その説明を聞くと、確かに斬新で信憑性の高い説で、さすが作家の考えることは違うわい!と驚いたのですが、その後で専門家が一刀両断にズバズバと否定しまくって面目丸つぶれとなって気の毒に思ったものです。
 専門外の人が考える仮説は素人目には面白いものでも、専門家が見ると問題外の噴飯ものなんだなということです。それは現在安倍政権やその一味が押し付けようとしている歴史修正主義についても同じことが言えます。
 
 井沢元彦に関しては、その後才能も枯渇して、楽に稼ぐ売文稼業の手口に味をしめているようです。
 歴史を調べているうちに、権力による横暴を暴くことよりも権力に取り入る方が楽に稼げるのが分かったというのがこの方の結論なんでしょう。
 まあ残念な現実です。

Nature_Boyの薄っぺら〜いBlog
井沢元彦 - ダビデの星の暗号
  https://ameblo.jp/natureboy-wooooo/entry-11595204831.html
オリオン村 ダビデの星の暗号
  http://blog.goo.ne.jp/clm_orion/e/e75e5ef82bbac6a2122aa7c19dc96434

  [wikipedia:井沢元彦] 
  [wikipedia:歴史発見]

  [wikipedia:伊達騒動]  

  [wikipedia:後西天皇]

  [wikipedia:日ユ同祖論]

  [wikipedia:漱石と倫敦ミイラ殺人事件](1984年)

  [wikipedia:島田荘司]

  [wikipedia:海渡英祐]

ブクログ
  http://booklog.jp/item/1/404166215X
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posted by SF Kid at 08:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 探偵小説
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