2012年09月17日

テミスの無人都市 草川隆

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    テミスの無人都市 (少年少女21世紀のSF 9)
  ☆
★(あらすじ  ネタばらし注意!)★
 22世紀のトウキョウ。
 ヒロシは、医者になるための教育をティーチング・ロボットに毎日受けている生活にうんざりしていた。
 彼は本当は宇宙パイロットになりたかったのである。
 トウキョウ宇宙空港に宇宙船の発着を見に行った日、ヒロシは突発的に土星行きのロケットに密航する。
 そのロケットで、宇宙パイロットの教育を受けている少女・マミや、やはりヒロシと同じような理由で密航していたケンと仲良くなる。
 土星の衛星ミマスに着いた夜、三人は宇宙ロケットを見学に行くが、手違いでロケットが発射し、ロケットに忘れ物を取りに来ていた少女・アキと一緒に宇宙空間に飛び立つ。
 四人が気が付くと、存在しないと思われていた土星の衛星テミスらしい衛星に不時着していた。
     ☆
 そこは、ゴシック建築スタイルの建物が建ち並び、ピラミッドやコロシアムまであった。
 そして、犬やコンピュータが、彼らを歓迎する。
 ボス犬“ゴロ”によると、人間は、200年前にいなくなったという。
 4人は、再び帰ってきたご主人様ということで、犬やコンピュータに世話されてテミスでの生活を始めるが……。
  ☆   
★(感想:人類5000年の歴史を遡る壮大なSF!……の方がよかったんじゃない?)★
    (※ネタばらし注意!!)
    
 http://sfclub.sakura.ne.jp/21csf09.htm
の続きとなります。
     ☆ 
 それでは、以下、ネタバレに関する記述です。
    ☆
    
 本作品を読む前、本作品について検索したところ、以下の記事が出てきました。
  
    
 つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―
  『テミスの無人都市』草川隆:金の星社
   http://plaza.rakuten.co.jp/sagayama/diary/200908090000/

  
「本書では宇宙のどこからか流れてきた人たちがテミスに住みつき、さらに地球へ飛び立ってエジプト人の先祖になったという設定になっている。」
  

という記述を読んで、これはなかなかスケールの大きい設定だ、素晴らしい、と思いました。
 エジプト文明というと、紀元前3000年ですよ。
 失われた古代テミス文明と人類誕生の謎を描く、人類5000年の歴史を遡る壮大なSF!
 テミスの犬とコンピュータは5000年の間、失われた文明を守ってきたのか!と感動しました。
 ところが実際に読んでみると、少々しょぼいような。
 テミスから人類が消えたのはたかだか200年前ということです。
  
 上でリンクさせて頂いた「つれづれなるままに」嵯峨山登さんのブログの記事のコメント欄で、大阪のジムシイさんが指摘されていることが本当なのです。

   
 すなわち、ピラミッド文化を築いたエジプト人は、優れた科学力を持っていた。
 一部のエジプト人が、テミスに、自分たちの新しいユートピアを築いた。
 誰にも邪魔されたくないので、テミスをスクリーンで覆い、外から見えなくしていた。
 ところが、重力装置が故障し、テミスに住めなくなると思った彼らは宇宙船を建設してテミスを脱出した。
 そのテミス脱出の際、スクリーンを開いたため、偶然ピッカリングがテミスを発見した。
 それが1904年のこと。

  
……犬達やコンピュータの語るテミスの歴史の断片を総合して、ヒロシ達は上のように想像します。
 しかし、1904年というと、20世紀初頭です。
 テミスを脱出したテミス人は、当然、故郷である地球を目指すはずでしょう。
 果たして、テミス人は地球を訪れたのでしょうか。
  
    
「もちろんテミスを脱出した宇宙船団が、新しい惑星に到着するまでに事故にあって、全滅してしまったとも考えられる。」
    
   
とも書かれています。
 果たして、彼らは全滅したのでしょうか。どこに消えたのでしょうか。
      ☆  
……そう考えると、1904年にテミス人が脱出したという設定に少々無理があるように思えます。
 そう考えるなら、未開の地球のエジプトに流れ着き、エジプト人の先祖になったという、嵯峨山登さんの設定の方が理論的に納得いってすっきりするし、SF的にも素晴らしいような気がします。
  
 ただ、この設定を使うとすると、1904年にピッカリングがテミスを発見したことの説明をどうつけるか。
 偶然、バリヤー装置のトラブルがあったとかで説明できるでしょうか。
  

 それにしても、人の記憶というのは意外と当てにならないものです。
 勘違いだとか忘れるとかいうこともよくあることですが、それも含めての読書体験であります。
 久しぶりに読み返したり、他の人との会話などで、思い違いに気付くこともあると思います。
 それもまた読書の醍醐味なのであります。
 そういう意味で、ブログやHPなどでネットを介してのつながりも、読書体験を豊かにする一つの要因ではないでしょうか。

 皆さんも、子どもの頃読んだジュヴナイルSFを読み返してみませんか?
 懐かしい思い出・新しい発見がきっとあるに違いありません。

    
     
 さて、ヒロシ達は、地球に帰るために、宇宙船の建造を始めます。
 テミス文明の優れたツールを駆使して、テミスのテクノロジーを頭脳に植え付け、宇宙船製造工場を再開させるのです。
 何も知らない子どもでも宇宙船を製造できるようになるとは、テミス文明はすごいものです。教育に活用したら誰でも天才になれます。
 しかし未だかつて、子どもが宇宙船をゼロから設計し、製造したというSFがあったでしょうか?
  
 しかし良く考えると、何もわざわざ宇宙船の建設なんて行わなくても、通信設備を充実させてSOS信号を発したり、テミスを隠しているバリヤー機能をOFFにしたら、地球人が見つけて助けに来てくれるのではないでしょうか。
 そちらの方が現実的で簡単かと思うのですが、SF的には、宇宙船を建設する方が面白いか。
    ☆
 ともかく4人は宇宙船を製造し、犬達やコンピュータを乗せてテミスを出発します。
 しかし、警報装置が鳴り、いくら点検しても原因が分かりません。
 テミスに引き返し、詳しく調べますが、あきらめるより他にありません。

  
 このテミスのテクロノジーを駆使して製造した宇宙船に欠陥があった、というのがミソですね。
 もしかしたら、200年前、テミス人が製造した宇宙船にも、同じ欠陥があったのではないでしょうか?
 そして、地球に辿り着く前に帰らぬ人となってしまったのかも……。
    ☆
  
 4人が途方に暮れていると、宇宙船の受信装置が、宇宙観測艇からの発信をキャッチします。
 4人の宇宙船がテミスから出入りする際、テミスを隠しているドームが開いたため、観測艇がテミスをキャッチしたのでした。
 やはり頼りになるのは通信機能。
 宇宙船も、受信装置があるのなら、発信装置もあるのでは?
 発信装置を使って土星基地に呼びかけてれば良かったのに。
    ☆ 
   
 さて、今後の展開は、どうなるのでしょうか。
 地球に帰った4人は、どのような生活を送ることになるのでしょうか。
 なかったはずの衛星テミスの失われた文明が新たに発見されたわけです。
 テミスの高度なテクノロジーを得た地球人は、どう活用していくのでしょうか。
 歴史学的に、テミス文明の謎も解明されるのでしょうか。
 また、この失われた古代テミス文明を発見したのが、ヒロシ、ケン、マミ達。
 偶然巻き込まれてしまったアキは別として、上の3人は、コンピュータによって決められた将来像について不満を持っています。
 いわば彼ら3人の将来は、決まっているようで決まっていない。あるようでないもの。
 なかったはずのテミスの古代文明を発見し、色々な経験を積んだことで、彼らの将来は確定していくのでしょうか。
    ☆      

 例えば、テミスに大地震が起こり、アキが足を骨折した時、医学の勉強をしていたヒロシが応急処置をします。
 嫌々ながら勉強していた医学の知識が役に立ったわけです。 
 この経験がヒロシの将来に対する考えにどう変化をもたらしたのか、興味あるところです。
 しかしその後の展開は、専門知識のないケンが愛情で傷の処置をなしとげたという展開になって、将来に対する伏線がうやむやになってしまいました。
 このエピソード、一体どういう意味で挿入されたのでしょうか。
    ☆   
……とまあ、その後の展開を考えると、色々と楽しくなってきます。
    ☆   

  
 しかし物語自体は、宇宙観測艇からの発信をキャッチして4人が喜んでいる場面で終了しているんですね。
 その後、宇宙観測艇は、無事、テミスに辿り着いて4人を発見してくれるのでしょうか?
  
 果たして、テミス人は、どこに消えたのでしょうか?
  
 果たして、4人は、無事地球に戻ることができたのでしょうか?
      ☆    
    
20世紀少年少女SFクラブ
 金の星社 少年少女21世紀のSF(9)
 テミスの無人都市 なかったはずの衛星テミスの失われた文明
  http://sfclub.sakura.ne.jp/21csf09.htm
      ☆   
編集後記  http://sfkid.seesaa.net/article/293027549.html
    

  中学生の頃読んだSFを探しています。
     http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2010/0116/288262.htm
             
2012.09.17(月)


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    テミスの無人都市 (少年少女21世紀のSF 9)
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タグ:草川隆
posted by SF Kid at 21:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 少年少女21世紀のSF
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